INTERVIEW

ライフスタイル業界が考えるアフターコロナ

コロナ禍で求められるモノ

「三密回避」「STAY HOME」ーー新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、人との接し方の概念やライフスタイルに変化が強いられ、これまでの当たり前が大きく変わろうとしている。

「在宅勤務」や「おうち時間」といった言葉からも見られるように、人々の関心は“家の外”ではなく“家の中”に向けられるようになった。これに伴い消費者の需要や購買行動も著しく変化している。

今回、MMD取材班は新型コロナウイルスの影響を受けたライフスタイル業界の動向を調査すべく、緊急事態宣言発令中の5月8日にオンライン座談会を開催。「合同展示会:MONTAGE 23RD – 変化する時代に求められる合同展示会の役割 -」の記事でも紹介した、セレクトショップに向けた合同展示会「MONTAGE(モンタージュ)」の主催者に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うライフスタイル業界のこれからを語ってもらった。

[座談会メンバー]
中島良氏(写真右上):「MONTAGE」全体統括 ライフスタイルブランド「BRID」で営業や企画・製造管理も行う / 篠崎聡氏(写真左下):「MONTAGE」空間演出 セレクトショップ「efim」運営  他、卸や企画コンサルタント業も行う / 稲葉健浩氏(写真右下):「MONTAGE」運営 INITで卸や企画コンサルタント業も行う
[MONTAGE] 
モンタージュ

「BRID」「efim」「INIT」が主催するセレクトショップを対象としたBtoB向け合同展示会。インテリア、グリーン、アウトドアの3つのカテゴリーを中心に、売場の空間づくりも含めたトレンドを発信している。これからのライフスタイルのトレンド創造の場として、カテゴリーの垣根を越えた、新しい視点が発見できる。

https://montage-express.jp/

「対コロナ」と「おうち時間」需要

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、ライフスタイル業界はどのような変化を感じていますか?

− 中島氏:ショップ運営は苦しい境地に立たされて、様々なショップやブランドがECを強化しているのが目立ちます。緊急事態宣言を受けてショップの営業を自粛している店舗が多いので、ショップスタッフがECショップの運営業務を行なっているというような話も耳にしました。

− 稲葉ショップだけでなくメーカー側も3月以降の売上は落ち込んでいる様子ですね。母の日に向けたギフト需要として、フレグランスやグリーン関連などの商品の納品で、4月くらいまでは昨年対比を越えているメーカーもあったようですが、全体としては厳しそうです。

外出自粛により「巣ごもり」需要が高まっているようですが、商品の動きとしてはどうでしょうか?

− 篠崎エンドユーザーの需要に合わせて、消毒アルコールや除菌グッズにマスクといった感染予防アイテムを取り扱うようになった卸先も見受けられますね。

もちろん「需要と供給」として合わせていくことも大切なんだけど、やり過ぎてしまうとショップのスタイルやコンセプトが崩れてしまう可能性もあるから、扱いが難しいところなんじゃないかと。

希望を言えば「おうち時間」が長くなることで、インテリアをはじめとしたライフスタイルを取り巻く大きなカテゴリーの売上が動いていってくれるといいんだけどね。

− 稲葉外食を避けて自炊する機会が増えたことで、料理はもちろんパン作りやお菓子作りにチャレンジする人などが増え、キッチン周りのアイテムや調理家電の売れ行きが好調になったというような話も聞きますね。

− 中島インテリア関連では、リモートワークになったことをきっかけに家庭内での仕事環境を整えるための家具を新調したり、デスクライトなどを必要とする方も増えているようですよ。

他にも、手軽に部屋の印象を変えられるラグやクッションなどのファブリック関連や、オンライン会議などで室内が見えてしまうこともあってか、収納用品など軽家具が好調な印象ですね。

外向け商品の落ち込みと行き場をなくした商品

こういった消費者のライフスタイルの変化を受けて、カテゴリーによっては苦戦しているところもありそうですね。

− 稲葉この状況下で大変なのはやはりアパレルではないでしょうか。外出や通勤・通学の自粛で、ファッション関連やバッグ・時計など外向けの商品は特に動向が厳しいと思います。

− 篠崎そうそう。アパレルをメインに扱っているショップは洋服以外のアイテムを探しているのが伺えますね。それこそアウトドア関連の商品とか。アウトドアは庭や公園などの近場でも楽しめるということもあってか、業界としての影響は少なくて比較的好調と言えます。僕のところにも相談がきてますよ。

MONTAGE主催:篠崎氏が運営するショップ「efim(エフィム)」
ファッショナブルでビギナーでも楽しめるアウトドア商品などを取り扱う。

− 中島今年は東京オリンピックが開催される予定だったので、それに向けて商品を準備していた企業も頭を悩ませていると思います。商品構成を改めないといけないだろうし、仕入れた商品や生産した商品の行き先に困っているところもあるんじゃないかな。

インバウンド需要を見込んで、日本製商材や職人とコラボした地産地消商品を準備していたというお店の話も聞きましたし。

オリンピック開催に合わせてインバウンド向けの商品MDを強化していたショップも少なくないでしょうね。

− 篠崎オリンピックは来夏に延期すると言われても、ショップやメーカーは在庫をただ寝かしておくわけにもいきませんしね。

実店舗の営業時間短縮や休業を余儀なくされ、企業が商品の売場をなくしている一方で、CtoCはさらに活発化したように感じます。オンラインフリーマーケットサービスには、商品が大量に出品されているんですよ。「D.I.Y」とか「断捨離」とか、家にいる時間が増えた人たちみんなが、こぞって家の整理を始めたんでしょうね。

− 中島氏:製造業の現場も厳しいと耳にしました。各国がロックダウンしたことで、世界的に製造が中断状態になってしまい、仕入れ難も起こっています。

ただそんな中であっても、卸先のない製造会社自らが消費者に向けて商品販売を始めたり、現状をどうにか打破しようと新たな販促や販路の開拓をしているところもあります。BtoBからBtoCへと、なくした売場を補うポジティブな動きがちゃんとあるんですよ。

ピンチをチャンスに変えるには

業界の今後はどのように変化していくと思われますか?

− 稲葉コロナが収束したとしても、完全にこれまでのライフスタイルと同じに戻ることはないんじゃないでしょうか。コロナ以前の生活では考えられないくらい、みんなが「STAY HOME」している今だからこそ長い時間を過ごす「家の中を快適に、おしゃれに」をスタンダードとして認識してもらい、消費が落ち込むのを防ぎたいですね。

− 篠崎確かに消費が落ち込むことは容易に予想できますからね。収入が減った買う側の人はこれ以上お金を使いたくないだろうし、またこんなことが起きるかもしれないと思うと尚更無駄遣いもできない。でも、売る側も売れないからといって値下げはしたくない。“良いものなのに安く売るしかない悪循環”はなんとか阻止したいです。

− 中島そうですね。そこから「今後売れるモノって何だろう」って考えると、モノを大事に使うという意味も含めて、“長く使える商品”は強いんじゃないですかね。

こだわりやブランド力のあるものが残っていくだろうし、差別化すべきポイントでもありますよね。「おうち時間」がある今、消費者はより“自分のこだわり”を追求してモノを探せる時でもあるので、作家やアーティストがよりフォーカスされる時代が来るかも。

新たな「売場」の開拓が必須

ショップバイヤーに向けた展示会を運営する皆さんは、オンラインの活用をどうお考えですか。

− 篠崎企業やショップは「オンライン展示会」に目を向けていますよね。以前から小売業のIT化は見受けられましたが、今回のことでその動きが大きく加速しました。今は減少してしまった売先をどうにかして増やさないといけないので、そのためには良い流れだと思っています。

− 中島新たな売先や販路を増やすという意味では、我々が主催する合同展示会「MONTAGE」もひとつのお披露目の場としてぜひ活用してもらいたいですね。10月に開催する「MONTAGE.24」では、増床して出展社を増やし、これまでよりも規模を拡大する予定にしています。

また、新たな試みとしてまだ試用稼働中ではありますが、MONTAGEもオンライン展示会の「MONTAGE.ONLINE」を昨年後半からスタートさせています。

10月に開催される合同展示会「MONTAGE」では、現在は試用段階の
オンライン展示会サービス「MONTAGE.ONLINE」も本格始動するそうだ。

展示会の規模拡大にオンライン展示会と、出展社・来場者ともに期待されているのではないでしょうか。

− 稲葉そうですね。こんな状況でも次回の出展応募は昨年より多くいただいています。こんな状況だからこそ、商品のお披露目の場が望まれているのかもしれませんね。出展社数の枠が増えることで、出展社・来場者ともに新たな業界からの参加も期待しています。直接来場できない方には、ぜひオンライン会場を活用していただきたいですね。

− 篠崎ECショップの好調など業界全体としてもオンラインでの販促の活性化を受けて、「MONTAGE.ONLINE」も展示会を開催する10月に向けてブラッシュアップし、本格始動したいと考えています。

今回の様々な影響も踏まえて、「MONTAGE」に来場してもらうことで、モノが売れる仕組みや新しい気づきを与えられるような、フォローアップができる場にしたていきたいですね。

消費者に近いプロモーション活動

企業やショップもこれまで以上にIT化が進んでいくことになりそうですね。

− 篠崎間違いなくIT企業はさらに伸びていくでしょうね。我々のいる業界は比較的アナログな業界だと思うので、「オンライン展示会」という言葉が出てきたように、そこにIT要素を掛け合わせてチャンスを見つけたいですね。

− 中島すでにメルマガやホームページ上で特集を組んでオンラインの売り場を強化するというのはどこも行ってますしね。商品構成を変えるというより、今ある商品をどこでどういう風に見せるかといった視点の切り替えが大事だと思います。

− 篠崎販促活動もこれまでとは変わってきてるよね。Instagramを使った商品PRやYouTubeでの新作発表とか、この機会にどんどん企業も新しいことにも挑戦してる。より消費者に近く、ダイレクトに呼びかけるマーケティングが主流になりつつあるのは感じます。

篠崎氏が運営するセレクトショップ「efim(エフィム)」のInstagramページ。

− 中島YouTubeでの商品紹介はよく聞きますね。動画で営業活動をするっていうのは効率の良さから考えても今後もっと増えると思います。

消費者にわかりやすくかつダイレクトにアプローチしていくためにも、IT知識やスキルがあるかどうか、それをうまく使いこなせるかどうかということは、今後さらに重要になっていくでしょうね。

消費者行動を読む力とそれに対応するスピード感

日本で初めて新型コロナウイルス感染者が確認されて4ヶ月余り。以前から変わりつつあった消費者の価値観は急速に変化した。そのひとつが「モノ」への価値観だ。今後、消費の関心は商品の作り手であるメーカーや作家の想い、その背景となるストーリーなどがさらに重視されていくようになるだろう。

同様に、作り手側にも変化が見られる。業界のIT浸透により、消費者個人に寄り添った販促や販売ができるようになり、拠点を選ばず物作りや販売が可能となってきている。

この変化は、多くの人々や企業が“いつか来るとわかっていながら対応に躊躇していた変化”かもしれない。企業にとって前例を待っていては死活問題になりかねない状況下である今、先見の明を持った決断とスピードが極めて重要だと言えるだろう。その対応力は企業の大小や場所に捉われなくなろうとしている。

つまり、これからの時代でモノを売っていくには、企業や個人の垣根を越え、先回りして対応できる力が求められる。我々は一刻も早い新型コロナウイルスの終息を願うと共に、ワークメディアとして、この先訪れるであろう新しいライフスタイルの発信を続けていきたいと思う。