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コロナでセレクトショップが抱える課題

ライフスタイル業界への影響

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) <以下:コロナ>の大規模な流行は、今なお私たちのライフスタイルや経済に大きな影響を与えている。

前回MMDは「ライフスタイル業界が考えるアフターコロナ」で、セレクトショップ合同展示会「MONTAGE (モンタージュ) 」主催者3名にライフスタイル業界のコロナ禍での状況やアフターコロナについての見解を語ってもらった。

同時に、読者であるセレクトショップやメーカーへ向けて「新型コロナウイルスの感染拡大に伴うアンケート」を5月15日~5月25日までの11日間に実施。多くのショップやメーカーから、売上状況や具体的なアイテムの売上変動などの質問に答えてもらった。

今回は本記事と次回の2回に渡って、アンケート結果からわかるライフスタイル業界の現状とコロナ禍での課題に対する各ショップ・メーカーの対策、これからの業界の行方について探っていきたいと思う。

コロナショックによる売上への影響

2020年セレクトショップを取り巻く業界の動向は?」でも結果をお伝えした通り、昨年末にも業界の景気動向調査を行なったが、ライフスタイル業界はここ数年の売上は決して良いとは言い難い状況が続いている。そして今回のコロナショック。

各ショップやメーカーの売上にはどのような影響が出ているのか。業界関係者はその影響をどのように感じているのか。コロナショックによる影響や前年との比較を踏まえて考察していきたい。

実際にアンケートの結果を見てみよう。売上への影響について「売上が減った」「大きく売上が減った」という回答は全体の7割を占め、「どちらでもない」を含めると9割以上。「売上が増えた」「大きく売上が増えた」という回答は、1割にも満たなかった。

前年比を見てみると、最も多かったのは「前年比71%〜90%以下」。また、前年比を割っている企業が全体の7割以上という結果になった。

「前年比120%以上」と回答した企業の多くは、従業員数100人未満、かつ売上規模10億未満のEC・通販、問屋・メーカーであった。

EC・通販業態の企業は、前年から好調が続いている。これら企業のコロナによる売上変動についての回答は「売上が増えた」「大きく売上が増えた」が目立つ結果となった。元々好調に売上推移していた同企業が、前年比ベースで見ても引き続き好調な結果と考察できる。

追い風に乗るECショップ

今回のコロナの影響で「STAY HOME」「おうち時間」といった言葉がキーワードとなったように、人々のライフスタイルや興味のポイントは家の“外”から“内”へと急速に変化した。その中でも外出せずに買い物ができるオンラインショッピング需要の高騰はアンケート結果からもわかる。

EC・通販業態の売上は「売上が増えた」「大きく売上が増えた」が6割を占め、「どちらでもない」を含めると9割。「大きく売上が減った」と回答した企業はなく、「売上が減った」と答えた企業が1割だ。

売上が増えたと回答した6割の企業は、元々消費者の“巣ごもり需要”や“除菌需要”に対応した品揃えを持つという共通点がある中、カテゴリーを縦断した多種多様なライフスタイルアイテムを展開している、ECショップならではのロングテール戦略がとられている企業が多いと感じた。

購入商品が直接自宅へ配送される利便性が強みとなり、巣ごもり・除菌アイテムなどの必需品との同時購入による売上増が考えられる。

また、小売業全体としてもEC業態の売上の伸びが見られる。今回のコロナの流行を機に、売る側と買う側との接点が「実店舗」から「EC」へと急速にシフトし、小売業界の「EC」での前年比売上は約120%という数字も見受けられる。

落ち込みの見られる業態としては、実店舗や、問屋・メーカーだ。これら業態の全体の8割が「売上が減った」「大きく売上が減った」との回答をしている。

アンケート結果からも分かるように、EC販路を持たない企業が最もあおりを受けたといえるだろう。緊急事態宣言は解除されたが、ワクチンや特効薬は開発中であり、外出に不安を感じる人も少なくない。コロナ以前のような活気のある街へと回復するまでは時間がかかると見られ、実店舗の集客はまだまだ厳しいことが予測される。

今後重要となってくる課題はEC販路を持つことだけでなく、ECの売上比率を上げることだ。この比率が低い企業は、ECの前年比が200~300%であっても実店舗売上減少の補填にまで及ばず、課題解決の策が必要だ。

また、緊急事態宣言の発令や店舗施設への休業要請により百貨店やショッピングセンターなどは臨時休業を余儀なくされた。

その結果、施設の営業状況に左右されるテナント店舗より、自らの判断で営業・休業できる路面店舗の方が柔軟な対応とそれに準ずる結果を得ることができたのではないか。

ステイホームにより需要が高まったアイテム

「売れているアイテム」の回答では、マスク・除菌・空気清浄機などのウイルス対策アイテムや、巣ごもり期間中に家の中で楽しめるアイテムが目立った。元々売れ筋だったアイテムも見受けられるが、コロナ需要でさらに売上が加速したことが分かる。

例えばキッチン周辺商品。飲食店の営業自粛やリモートワーク推進の環境下で、変わったことのひとつが食事だろう。勤務先での昼食や飲み会、週末の外食機会が減り、自炊の頻度が上がったことにより、調理器具などのキッチン用品が売れているようだ。

新規購入はもちろんだが、もともと使っていた道具にも興味やこだわりが生まれ、買い替え需要もあるのであろう。また、お菓子づくりツールやホットプレート、BBQグリルなどの調理家電も合わせて売れており、休校中の子どもも含め家族で料理やお菓子づくりを楽しむ様子が窺える。

同様に好調なのが、生花や観葉植物、ドライフラワーなどのグリーン・ガーデン関連商品だ。生花業界の傾向として、昔ほど花は売れにくくなっているが、感度の高いエンドユーザーが多いセレクトショップでのグリーンカテゴリーの動向は決して悪くはない。また需要が高まるシーズン性もプラスに転じて、家の庭やベランダで菜園や園芸を楽しむ人も増えている。自宅でハーブや野菜を育てて料理に使うなどのちょっとした自給自足が、外出自粛で溜まったストレスを和らげているのも事実であろう。

“グリーンと人”が共存する空間デザイン」でも取り上げたように、植物がもたらす、豊かさと心地よさのある暮らしを再考するいいタイミングかもしれない。

他にも在宅時間を癒すためのアロマディフューザーやルームスプレーなどの香りアイテムといったリラクゼーション商品は売行きが良い。

これら好調商品は、必需品となりつつあるリモートワーク関連商品と同様に新規展開商品として今後の取り扱いを検討しているショップも多いようだ。

ニーズが減少したアイテム

アンケート結果の「売れなくなった商品カテゴリー」ではアパレルの回答が多く見られた。外出する機会が減り、オシャレすることへの関心や、その必要性を見失ってしまった人が多いのかもしれない。

「おうち時間」充実のためのルームウエアやアンダーウエアが注目されていると聞くが、今回のアンケート結果から「売れているアイテム」としての回答はなく、「今後の新規展開商品」として取り扱いを検討しているショップが見受けられた。

また、アパレルに限らずトラベル・インバウンドの商品を扱う業界は、コロナの影響を全面的に受けており、これから夏にかけて政府の助成などを取り入れながら各社回復に向けて施策の打ち出しが予想される。MMDでは、コロナショックにより打撃を受けた業界の今後の取り組みに関して、次回の記事でより詳しく考察していきたい。

Withコロナで生まれた新たなニーズ

新しいライフスタイルには新しい需要がつきものだ。Withコロナの生活を推められているいま、生活者の新たなニーズを探っていくことが、次なる売れ筋アイテムの開拓につながるかもしれない。

例えば「マスク」について考えてみる。以前から日本では咳エチケットとして身近なものであったが、今ではより多くの人が外出時に着用しているのではないか。

その需要を受けて、アンケートの「新規展開商品」の問いには3割以上の企業がマスクと回答している。日常的に身につけるものになりつつあるマスクの定義に変化の兆しが見える。

それは、かつての「メガネ」と同じような変化をたどる可能性がある。今でこそブルーライトから眼を守るPCメガネや、ファッションとして楽しむ伊達メガネといったものが当たり前に流通しているが、本来は視力矯正のための医療器具だ。

そこに新たな機能を加え、ファッション性を備えることで新たなニーズを生み、顧客創造・市場拡大につながった。このイノベーションがマスクにも同様に起ころうとしているのではないか。

実際に、クール素材で作られたマスクのように機能性を備えたものや、生地やデザインにファッション性を持たせた商品が数多く販売されている。需要の拡大も相まって、セレクトショップでも取り扱いが増え、今や売れ筋アイテムとなった。マスクを取り扱うことでブランドイメージ低下を危惧しているショップは、機能性マスクを新たなカテゴリーとして捉えてみてはどうだろう。

また、キッチン・リラクゼーション・フィットネスのカテゴリーなど、家の外に向いていた消費が家の中に向かっている今、同様にイノベーションを起こせる可能性があるアイテムはまだまだあり、次回後半の記事で詳しく取り上げたい。

未曾有の危機をチャンスに変える施策

ライフスタイル業界は今まさに終わりが見えない渦の中にいる。今回のアンケートから、コロナの影響を受けたセレクトショップやメーカーの売上動向・その内訳の一部を知ることができた。

多くの企業は決して良い状況とは言えないが、そんな中でも新たなビジネスチャンスと捉える前向きなコメントも寄せられている。

アンケートに寄せられたコメントを見てもわかるように、この機会をポジティブに捉え「今できること」「これから必要となること」が何かを問い続け、Withコロナの中でエンドユーザーのインサイトを見つけることが、次に訪れるアフターコロナの中での市場開拓につながることは間違いないであろう。

では、新たなニーズを見つけた際にどう対応していくのか。次に気になるのは、新たな販路開拓や販売促進などの新しい課題や挑戦を前に、他のショップやメーカーなどがどういった動きをしているのかという施策内容ではないだろうか。

コロナショックにより消費者の利用頻度が加速したECサイトの強化はもちろん、この数ヶ月でSNS上では企業と消費者との直接的なコミュニケーションがさらに活発になったように思う。

また、SNS上のライブ配信やYou Tubeなど動画利用の勢いも増している。少し前まで娯楽やコミュニケーションツールとして親しまれていたものが、今や媒体となりビジネスやショッピングにも活用されている。

次回は、各ショップやメーカーの強化施策とその具体的な内容などを、アンケート結果と共に紹介したいと思う。