OTHER

2020年後半のセレクトショップの動向

コロナが変えたモノの売り方

前回の記事「コロナでセレクトショップが抱える課題」では、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) <以下:コロナ>の感染拡大がセレクトショップにもたらした変化を具体的な商品の売上動向と合わせてお伝えした。

コロナの影響で消費者のライフスタイルが大きくに変わった今、ショップやメーカーも商品の売り方やエンドユーザーとのコミュニケーションを変えていく必要があると言える。

本記事でも前回に引き続き、5月15日~5月25日までの11日間に実施した「新型コロナウイルスの感染拡大に伴うアンケート」の結果を届けたい。さらに今回は、そこから見える2020年後半の景気の見通しと、これから強化すべき販売促進などのマーケティング施策を具体的な事例を織り交ぜながら考察していく。

低迷を抜け出す鍵はオンライン

早速、各セレクトショップやメーカーの「2020年後半の景気見通し」のアンケート結果を見てみよう。

7割近くの企業が「悪い」「とても悪い」 と回答。緊急事態宣言は一旦解除されたが、特効薬やワクチンが流通するまで自粛の流れが予想されるため、全体的に良くないという結果になったとみられる。

また、収束したとしても、コロナ以前の暮らしへ戻ることはないと考えている回答者が多く、エンドユーザーの新しい暮らし方・働き方に合わせたライフスタイル提案や価値創出が求められている。

それらの変化に現状できることとして、まずはコロナ禍で再び訪れるかもしれない外出自粛への対策を各社急いでいる。アンケートからは、「ECサイトの強化」や「自社ホームページまたはSNSでの集客の強化」など、ネットを活用して売上に繋げる施策を考えているショップが多いことがわかる。

自社媒体の充実と集客強化

具体的な内訳を見てみよう。「新型コロナウイルス感染拡大に伴う強化施策」では多くの企業が「EC」と回答。この中には既存ECサイトの見直しはもちろん、新規立上げも含まれている。

「雑貨、家具、インテリア」のEC市場は拡大しており、経産省が発表している小売物販系分野EC市場 2017年から2018年の伸び率を見ると、「その他」「食品、飲料、酒類」に次いで3位とある (引用:電子商取引に関する市場調査) 。もともとの伸び率上昇傾向に加え、コロナの後押しにより今後さらに市場の拡大が予想される。

では、ECサイトという箱だけを用意していれば安心だろうか。もちろんそういう訳にもいかない。商品のコーディネートの提案、自宅のコーディネートのイメージができるようなサービス、欲しいモノをすぐ見つけられるような検索のしやすさや購入のしやすさなど、エンドユーザーのニーズに対応できるコンテンツ内容の充実、UI / UXの改善も不可欠だろう。

次いで「SNS」「自社ホームページ」「Web広告」との回答が続いた。これらを活用して商品PRやSALE・イベント告知などのマーケティング活動を活発にすることで、店舗の認知拡大から店舗への実際の来店を促すための集客強化が見られた。

オンラインという新たな接客ツールの確立

コロナの営業自粛の影響で実店舗での売上が減少する中、オンラインでの売上を増加させ、安定的な売上確保を目指したいところだろう。

では、どのようにオンライン上から実店舗への来店・購買に繋げるか。施策のひとつとして、導入コストが他と比べ安価なO2O (Online to Offline) がある。自社ホームページやTwitter、Instagram、Facebook等のSNS (オンライン) を活用して来店の動機付けを行い実店舗 (オフライン) につなげる。店舗誘致に活用できるオンラインツールは年々増加している。

強化施策としてのアンケートの結果では「動画配信」「LIVE配信」少数ではあったが、昨今ではSNSやYouTubeなどを使用した動画マーケティングが注目を集めており、消費者との新しいコミュニケーションが可能なことから、時代の潮流に乗っておきたい。

その魅力のひとつは、テキストより情報が伝わりやすいところだ。また、LIVE配信ではリアルタイムでコミュニケーションをとることも可能だ。このことから情報の内容にも広がりが出てきている。商品の特徴、コーディネートなどの紹介はもちろん、製作過程や生産者の想いなどを映像と共に紹介することで、店頭での接客を受けるのと同レベルで商品知識を深めることができる。購買に至るまでのスピードや効率も必然的に上がるだろう。

今や商品の情報収集は来店時ではなく、ネットでの事前収集が当たり前になっている。さらに店員と店頭でコミュニケーションをとることにハードルを感じる消費者にとっては、動画コンテンツでの情報収集や非対面であるオンライン上での接客が増えることは嬉しい進歩といえる。

変化する接点と強化すべきコンテンツ力

このようにオンラインでのコミュニケーション手段は多岐にわたり、それぞれにメリットがあることがわかる。そこで重要なのは、その手段を使って、いかに消費者のニーズにマッチしたオンラインコンテンツをつくれるかどうかだろう。

スタイリスト近藤昌氏のビジネス力の秘密」で、近藤氏が語った言葉だが、「お店の商品と全然関係のない話をしたっていいと思うんですよ。例えば、美容室ではヘアスタイルとは関係のない話をお客様としますよね。会話をすることでお客様の背景が見え、自ずとお客様に似合うものや必要としているものがわかってくるんです。」

というように商品の説明だけでない話が相手のことを知ることに繋がり、それがショップのファンを作り、来店促進に繋がるのではないだろうか。各ショップそれぞれがエンドユーザーに合った施策を考えることが重要だ。

インサイトを察知したMD再考

コロナの影響で変わったライフスタイルによって、消費者はその暮らしに合う新しいアイテムやサービスを求めている。例えば、前回の記事「コロナでセレクトショップが抱える課題」でも述べた「マスク」だが、以前の「メガネ」のように従来のものにない機能や装飾を備えることで新たなニーズ獲得や市場拡大が期待できる。

ライフスタイルに変化のある時こそ、既存のアイテムやサービスを見直す時である。そこから生まれているエンドユーザーのインサイトにいかに早く気付けるかが今後のMDにおいて、重要なポイントであろう。

既に消費者ニーズとして施策が必要だと考えられるカテゴリーとして、例えば「トラベル」「インバウンド」「フィットネス」の3つについて考えてみよう。

まずは今回コロナショックで大打撃を受けた旅行業界。自粛や休業の解除が徐々に進むのと並行して観光インフラの再開も見られ、「Go To travel キャンペーン (仮称) 」など政府の多額の補助サポートも明らかになっている。業界同様、トラベルグッズ関連商品を取り扱う企業は回復を図りたいところだ。

セレクトショップでも観光・旅行客に向け、その地域の良さや特徴を再発見・再認識できるようなローカル商品を取り扱うなどして、この波に乗っておきたい。

また、「インバウンド」商品を国内消費者向けに方向転換していくのもひとつの手だ。コロナの影響で人々はモノの品質や製作背景、生産者に目を向け始めた。セレクトショップで扱う、クオリティが高く独自性のある商品に注目が集まることに期待したい。

「お土産屋さん」とは異なる、セレクトショップならではのオリジナリティあふれる商品や職人の手を介したクオリティの高いインバウンド商品は、ターゲットの変化に伴いアプローチを変えるだけで、売上が取れるのではないか。

最後に、フィットネス用品だ。これまではアパレルでの展開が中心だったフィットネスアイテム。コロナ拡大防止でジムの休業や外出自粛の影響から、自宅でのトレーニング需要が増える中「ヨガアイテム」「ダンベル」「バランスボール」などの商品が売れている。

その延長として、おうち需要で必要となる新たなアイテムにも着目してみてはどうだろう。大型の鏡やフィットネス補助の機能を備えた軽家具など、視点を変えて売場を構成していけばイノベーションを起こせるかもしれない。セレクトショップらしい商品を中心に集めて、売場を構成すれば、新たなカテゴリーに成長する可能性がある。

セレクトショップにおけるニューノーマル

消費者と企業、共にオンライン化の徹底・促進がされたことで、コロナ以前と以降では確実に利用人口の割合は高まったと言える。そしてその可能性は、同時にオフライン (店頭) の変化を示唆している。店頭でのタッチ&トライや接客・交渉など、これまでは当たり前に行われていたコミュニケーションは、オンラインでどのように変わっていくのか?

オンラインの活性化とオフラインとの関係性、今まさに変化しつつある暮らしのあり方こそが「ニューノーマル (新常識) 」として世の中に浸透していくことが予想される。その中で我々の“これまでの常識”がどう置き換えられていくのかを探ることで、店頭でのコミュニケーションやマーケティングなど、“販売におけるニューノーマルなあり方”が確立されるのではないか。

ブランドイメージの向上、認知拡大やファン化に繋がる施策に力を入れるのと同時に、これからの消費者行動に注目しつつインサイトを探ってみてはどうだろう。

「ライフスタイル業界が考えるアフターコロナ」で触れた、今後主流になると考えられる、より消費者に近くダイレクトに呼びかけるマーケティングもぜひ参考にしてもらいたい。