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ニットの魅力を引き出すデザイン

ニットの可能性

近年、アパレル業界ではその技術の進化とともに「ニット素材」に注目が集まっている。ニットというと毛糸で編まれたセーターを指して使われることが多いが、実際は編み物全体のことを指す言葉だ。編み方や素材によってカタチや特徴を変え、Tシャツや肌着、近年ではシューズにまで使われる身近な生地素材である。

今回MMDは、株式会社knot (ノット) が展開するライフスタイルブランド「TRICOTÉ (トリコテ) 」を取材した。ニットファブリックのデザイン事業から始まった同社は、今やプロダクトだけでなく店舗什器から空間デザインまで「ニット」をキーワードにありとあらゆるモノをデザインしている。

株式会社knot (ノット)
https://www.tricote.net/
2011年に創業し、ライフスタイルブランド「TRICOTÉ (トリコテ) 」をスタート。自社プロダクトのデザインだけでなく、無印良品の商品監修や三越伊勢丹とのコラボレーションなど、ニットのファブリックデザインを中心にプロダクトデザインやグラフィックデザイン、空間コーディネートと幅広く取り組む。

取材班が訪れたのは祐天寺にある「TRICOTÉ ONE ROOM」。アパレル、インテリアなど「TRICOTÉ」が展開するすべてのラインが揃うコンセプトショップだ。

デザイン会社ならではのファッショナブルかつユニークな商品はどれもがニットからなるモノだという。

今回は、新たなニットの可能性とデザイン会社が営むコンセプトショップの強みに迫りたい。代表取締役の魚谷 勇人 (ウオタニ ハヤト) 氏に話を伺った。

これから歴史を紡いでいく素材

「TRICOTÉ」について教えてください

− 魚谷氏コメント:ニット生地を素材とした商品を展開するライフスタイルブランドです。「TRICOTÉ」はフランス語で「編まれた」という意味で、「ライフスタイルの中でニットをより身近に感じてもらうこと」を目的にブランド展開をしています。

ニットと聞くとアパレルを想像される方が多いかと思いますが、包んだり覆ったり“カバーする”というその特徴を活かして、インテリアや日用雑貨など、もっと大きなジャンルである“暮らし”の中にニットを取り入れる提案をしています。

コード部分がニット素材となっている「KNOT PENDANT LIGHT」

なぜニットなのでしょうか?

− 魚谷氏コメント:この会社を始める前にアパレル企業でデザイナーをしていた頃からニットに魅力を感じていて、独立する際にはニットに特化したいという思いがありました。

理由はふたつあって、まず、編み物は織り物と比べて歴史がまだまだ短く、将来性があること。もうひとつは、その生産技術に可能性を感じたことです。

前職を辞めた後、開発現場に身を置いて実際に職人や機械に触れて知識を深めました。ニットを編む技術はどんどん進化していて、自動で編み上げられるそのハイテクさに改めてポテンシャルを感じました。

デザイン会社が営むコンセプトショップ

店舗を始められたきっかけは?

− 魚谷氏コメント:卸だけでブランドをしてると本当に伝えたいことがエンドユーザーに伝わらないと感じていて、ユーザーにブランドを伝えるツールとして“店舗”が欲しいと思ったことがきっかけです。

店舗を持つことでお客様と直接コミュニケーションをしてニーズを把握することができますよね。バイヤーの意見ももちろん大切ですが、そこ以外にも自分たちでインプットする場が欲しいと思ったんです。

他にメリットはありましたか?

−魚谷氏コメント:アウトプットの場所としてもショップを持つことはプラスに働いています。トレンドをキャッチして企画から生産、その先の販売までをスムーズに行えるのでPDCAを回すのに最適な環境になりました。

商品開発から販売まで自社で行えるためスピード感を持って色んなことに挑戦することが可能です。

需要をキャッチしてすぐ生産を始めたマスクは既に第3弾を開発中

− 魚谷氏コメント:また我々はプロダクト開発だけでなく、空間全体をデザイン・プロデュースすることもあるので、効果的なVMDの検証を実店舗でできるのもいいですね。

オンラインショップやSNSについても同様にトライアンドエラーでベストなコミュニケーションを探っていきたいです。

ショップスタッフもデザイナーということですか?

− 魚谷氏コメント:店頭で販売しているスタッフは全員がデザイナーです。まだまだ挑戦したいことや課題は多いですが、デザインベースの人間が店頭に立っている強みを活かして、完成形の商品を販売するだけでなく、来店いただいたお客様と一緒にモノづくりができるショップを目指したいです。

カスタマイズやオーダーメイドなど、デザイン会社が運営するコンセプトショップならではの“体験”をお客様に提供できれば嬉しいですね。

アップデートにこだわる

商品について教えてください

− 魚谷氏コメント:「AIR (エアー) 」と「BUMPY (バンピー) 」という素材の違う定番シリーズを設けていて、基本的にこれらのシリーズを毎年アップデートする形で新作を出しています。0から1でなく1から100を目指して商品開発をしていく方針です。

毎回新しいモノを生み出す“ゼロイチのモノづくり”は時間や労力がとても掛かるんです。我々はニットという素材を変えずに、定番の商品をどう「新しく魅せる」かを常に考えています。

技術や構造、デザインなど、トレンドや技術の進化によってアップデートできる部分はたくさんあるので、お客様にはそこを「TRICOTÉ」の“新しさ”としてキャッチしていただいてます。

ブランド価値の伝え方

今後についての課題や目標などはありますか?

− 魚谷氏コメント:商品の販売方法は今後の課題です。モノの良さや素材の良さを接客なしで伝えることはどうしても難しいですよね。エンドユーザーとのコミュニケーションは今後も探っていきたいと思っています。

「TRICOTÉ」の良さというのは、ニットの良さを説明できないと価値が伝わらないし、価値が上がらないと思うんです。雑誌を見るより店頭に来てスタッフと話す方が商品について深く知れる、買う行為そのものを楽しめる、そういう店舗を目指したいです。

また、コロナの影響でモノの売れ方がECへと変わってきているのは実感しました。サイトづくりにおいても、商品の持つストーリーやニットの価値を読み物として伝えられるよう強化を図っているところです。

インタビューにお答え頂き、ありがとうございました。

デザインを武器に認知を広める

「TRICOTÉ」のプロダクトは、身近にあるモノなのにどこか新しさを感じる。それは我々のまだ知らないニットという素材の力なのかもしれない。

馴染みのあるモノがこれまでなかった素材と掛け合わさることによって生まれる新しい価値観、そこから出来上がる空間、「TRICOTÉ」の提案するニットのある暮らしはとても興味深いと感じた。

実店舗を持つことの目的やスタッフの専門性にも目を向けてみてはどうか。エンドユーザーとのコミュニケーションのきっかけとなる場や違う角度からアプローチができるスキルを持つことで新たな発見があるかもしれない。

「TRICOTÉ」ではデザイナーと顧客とが一緒にモノづくりをするビジョンを掲げている。量産型のプロダクトではなく、オリジナルで希少なモノに注目が集まるこれからの時代だからこそ、そういった取り組みへのニーズは今後高まっていくだろう。

ユーザーの確固たるニーズとクリエイティブのプロならではのモノづくりの技術が掛け合わさって生み出されるプロダクトや企画に期待をしたい。