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ECの概念を変える「ひなたライフ」の戦略

EC市場のブルーオーシャン

小売、サービス、マスコミなど各業界にはその業界特有の文化が根付いている。こと小売業、ライフスタイル業界において言えば、これだけIT化が進む中、受発注は今だFAXで行っている会社も多く、まだまだアナログな風習が定着している。

今回MMDが取材したのは、そこにひとつの風穴を開けた「ひなたライフ」というECサイト。アナログ文化が染み付いているライフスタイル業界で、ECやSNSのWEB活用を主軸に成功を収め、売上を伸ばしている会社だ。

「ライフスタイル業界のEC市場やSNSマーケティングは可能性がたくさんあります。ブルーオーシャンだと思ったんです」そう語るのは、株式会社ひなたライフ 代表取締役の江戸 英雅 (エド ヒデマサ) 氏。同社創業前はアパレル業界にてEC事業に長く携わってきたという。

アパレル業界では「ZOZOTOWN」をはじめとするECサイトの台頭から年月が経ち、ECでの売買が販売経路のひとつとして、ごく当たり前の存在となった。反面、昨今の過剰在庫問題など、供給過多から発生する課題も浮き彫りになってきている。

そうしたアパレルでの課題を身近に感じていた江戸氏が着目したのが、異業種であるライフスタイル業界でのEC事業だ。「ブルーオーシャン」―― その言葉が指すこと、この業界に眠るビジネスチャンスとは何か。そして「ひなたライフ」がこれから描き出そうとしている未来像を探る。

ひなたライフ
https://hinatalife.com/
株式会社ひなたライフが運営するインテリア雑貨ECサイト。「ひなたぼっこのような温かい暮らしのお手伝いをしたい」というコンセプトをもとに2018年1月にオープン。2020年現在Instagramアカウント (@hinatalife) のフォロワーは36万人を超え、「ひなたライフ公式アンバサダー」と称されるライフスタイル系インフルエンサーを250名以上抱えている。

ライフスタイル業界のWEB活用への課題

創業にあたり、これまでのアパレルではなく、ライフスタイル業界を選んだ理由を教えてください

− 江戸氏コメント:現に話題になっている“アパレル飽和”を実感していたということもありますが、何よりインテリアを中心としたライフスタイル業界のWEBマーケティングに可能性を感じました。当時、自分のいたアパレル業界と比較して、ライフスタイル業界のWEB活用はとても遅れていて、SNS運用も含めてこれからといった感じでした。

その一方で、ライフスタイル商材は息が長いうえ、アパレル商材に比べ利益率が高い点にも注目していました。アパレルは基本的にSS/AWの概念で新作を出し、SALEで売って廃棄するの繰り返しですが、インテリアや雑貨はそういった概念があまりないですよね。流行り廃りが激しくないためか、業界の方々のモノづくりへの愛情も感じます。

ひなたライフが取り扱っているライフスタイルブランド

ライフスタイル業界の“WEB遅れ”とは具体的にどんなところでしょうか?

− 江戸氏コメント:リアル (実店舗) 中心の考えが根強い点です。第一にEC専業の企業は嫌厭されます。実際に業界に飛び込んでみて「実店舗がないので卸さない」と言われた時は、衝撃を受けました。

EC市場に商品が出回ることによる価格崩壊を危惧して、もしくは実際にそういった過去背景があって、実店舗優先の文化が根付いているのだと感じましたね。

また、卸と仕入れというビジネス構造もあってか、小売をするブランドが少ないことにも驚きました。卸先中心で未だにD to Cを行うところは多くない。単純に販路が増えるのに、手付かずなのはもったいないと思ったんです。

“EC専業”に立ちはだかる壁

ライフスタイル業界をECから改革していこうと考えたわけですね

− 江戸氏コメント:業界や商材の特性とWEB活用による伸びしろを考えると、今からでも市場のアーリーアダプターになれるのでは? と思い、「ライフスタイル商品のECをやろう!」と「ひなたライフ」を立ち上げました。

課題となったのは、先ほど挙げた価格崩壊の懸念から来る“EC専業お断り”の壁です。僕はそれを「ブランディング」で解決しようと思いました。

アパレル業界と比べるとライフスタイル業界には、圧倒的にブランディングが足りていません。各ブランドの良さやこだわり、価格帯を含む特徴を認知させることで市場での価格崩れを防げると考えたんです。

商品ページはブランドの良さを伝える事を中心に構成を考えている

具体的にどのような方法をとっているのでしょうか

− 江戸氏コメント:「ひなたライフ」では、ブランドや商品に対してのページ制作に特に力を入れています。写真や原稿は我々で制作し、商品一つひとつを丁寧に紹介しているのが特徴です。

ブランディングに悩んでいたり、DtoCに苦戦されてたりする企業は多くいらっしゃるので、この“ブランドを伝えるサイト構成”をメリットに感じていただくことで、仕入先を増やしてきました。

WEBコンテンツは“接客”そのもの

リソースのほとんどをひとつのブランドや商品のページ制作に?

− 江戸氏コメント:他のECサイトと比べると、ひとつの商品に掛ける時間は圧倒的に長いでしょうね。ひとつにリソースをかける分、費用対効果が悪い商品が出てきたり、他サイト同様にロングテールで売上を立てられなかったりと、当然リスクはあります。

それでも創業当初からこの方針を変えずに、毎日1コンテンツ以上のアップを続けてきた甲斐あって、今ではページの質の良さが取引先にもエンドユーザーにも評価いただける付加価値となっています。

時間も労力も掛けるため、メーカーや商品の選定はしっかり行っていて、制作チームの感性を第一に毎回議論を重ねて選定します。過去には人気商品にエンドユーザーの声を反映して別注展開で商品販売をしたこともあるんですよ。

エンドユーザーの声から誕生したオリジナルカラー (白) の脚立

ページの構成に特徴はありますか?

− 江戸氏コメント:WEBコンテンツ=接客だと考えているので、ひとつの商品がきちんとエンドユーザーに届くように、写真と原稿にはこだわっています。

まず、商品を利用した際の課題解決をイメージ訴求した上で、プラスのメリット、利用シーン、機能や注意事項を掲載しています。これらがひとつの読み物になるようページ構成を考えているところが特徴ですね。

カメラマンとライターが話し合いながら撮影やページ制作を行っている

− 江戸氏コメント:また、商品を紹介するコンテンツ型ページとは別にプラットフォーム型と呼んでいるブランド専用ページも開設しました。

このページ内であれば何を出品しても問題ないのですが、やはりここでも我々制作スタッフが商品撮影から原稿作成までを行います。

それだけこだわりを持ってサイト制作に取り組んでいるので、今後もむやみやたらに取引を増やしていくのではなく、モノを大切にしているブランドやメーカーとお付き合いをしていきたいですね。

「ひなたライフ」というコミュニティ

Instagramの施策について詳しく教えてください

− 江戸氏コメント:インフルエンサーマーケティングについても業界に先駆けて取り組もうと考えました。当初ライフスタイル業界には、インフルエンサー施策を行っている企業はほとんどなかったように思います。

ひなたライフのブランディングに共感を得て頂けた方にアンバサダーとなってもらい、商品をPRしてもらうという施策を続けてきました。

その成果もあって、今では月2万人のペースでフォロワーが増加しています。「ひなたライフ公式アンバサダー」は250人以上いて、認知度が上がったおかげでアンバサダーのオファーをご連絡すると喜んでいただけるまでになりました。

− 江戸氏コメント:アンバサダーとは専任担当者が密にコミュニケーションを取っていて良好な関係を築けているのですが、皆さんあたたかくて、モノや暮らしを本当に大切されている方が多いです。

だからこそ、その先の人々にも「ひなたライフ」や各ブランドの商品が真っ直ぐに伝わっているんだと実感しています。PRに関しては今後もさらなる強化を図っていきたいですね。

ブランドとエンドユーザーの架け橋

最後に今後の展望を教えてください

− 江戸氏コメント:今は雑貨・軽家具をメインに取り扱っていますが、エンドユーザーのニーズに応えるためにも今後はもっと大きな家具や家電まで領域を広げていく予定です。

直近の目標はサイトのプラットフォーム化で、「暮らしにまつわるものは全て『ひなたライフ』で揃う」と思ってもらえるように、ブランドや商品を増やして認知を広げていきたいです。

− 江戸氏コメント:我々が良いと思っている“モノを大切にしているブランド”で統一された世界観の中で生活用品が揃う環境を提供したいですね。その環境をつくることが結果的に「ひなたライフ」の価値を上げていくと思っています。

最終的には「ひなたライフ」の認知のもと、ECサイトの枠を越えてコミュニティとしてブランドとエンドユーザーを繋ぐハブのような存在になりたいです。

インタビューにお答え頂き、ありがとうございました。

ひなたぼっこのような温かいECサイト

現在「ひなたライフ」は約40社との取引実績があるという。この数字は他ECサイトと比較して決して多いとはいえないが、愛を持ってモノづくりをするブランドとそのモノに囲まれ暮らすエンドユーザー、両者に対して誠実に向き合う「ひなたライフ」の取り組み姿勢が導く必然的数字なようにも感じる。

従来の「Amazon」や「eBay」などに見られるような、多種多様な商品をとにかくたくさんアップしていく量産型のECビジネスモデルに捉われず、一つひとつの質を追求するカタチを取った江戸氏。それは、日本人だからこそできるビジネスのあり方ではないだろうか。

店に入れば店員が笑顔で出迎え、接客を行い、贈り物だといえば綺麗にラッピングをし、お見送りをしてくれるのが日本では当たり前だ。細やかなサービスや接客など、その丁寧さ・緻密さが海外からも高く評価され、世界一とも賞賛されている。

「ひなたライフ」のサイト運営は、その日本人らしいビジネスのカタチをリアルではなく“WEB”に持ち込むことで取引を拡大し、顧客の心を掴んだ成功例と言える。

「うちは創業からテレワークです。日本一自由な会社だと思います」と笑う江戸氏。働くスタッフのほとんどが家庭をもつ女性だという。柔軟かつ自由な社風がスタッフ一人ひとりにやりがいを与え、丁寧な仕事に繋がっているのだろう。

そんな同社は3期目の新たな試みとしてアプリをリリースしている。サイトの特徴でもある“読み物のようなページ構成”を引き継ぐ世界観で、リニューアル前と比べ1ヶ月で3倍のDL数に増加しており、好調な滑り出しを見せているとのことだ。

この追い風に乗って、さらなる事業の拡大が予想される「ひなたライフ」。江戸氏の掲げるビジョンの先にある“温かいECサイト”に今後も期待したい。