INTERVIEW,  SHOP

アーバンリサーチが取り組むSDGs

アーバンリサーチが考えるSDGs

「SDGs (持続可能な開発目標) 」が採択されて5年が経過し、日本ではようやく耳にする機会も増えてきた。しかし、海外と比較してみるとやはりその取り組みは遅れをとっていると言える。

MMDでは「阪口竜也氏が考えるSDGsビジネス」のように、SDGs達成に向け働く企業を紹介することが、その一端を担うことに繋ればと考えている。

SDGs (エスディージーズ) とは
Sustainable Development Goals (サステイナブル ・ディベロップメント・ゴールズ) の略称。2001年に策定されたミレニアム開発目標 (MDGs) の後継として、2015年9月の国連サミットにて採択された2016年から2030年までの「持続可能な開発目標」のこと。途上国の貧困や飢餓問題をはじめ、環境問題、経済成長やジェンダー平等など世界的な課題解決へ向けた17のゴール (目標) と169のターゲットから構成されている。

取材を行ったのは株式会社アーバンリサーチ。セレクトショップとして誰もが知る大手アパレル企業であると同時に、CSRの領域を超えたサステイナブルな活動が企業の特徴でもある。

ダウンをはじめ羽毛製品を回収し新たな商品へリサイクルする「Green Down Project」や東日本大震災の被災地復興を目的とする「東北コットンプロジェクト」など、2015年SDGsが採択される以前から“持続可能な社会”に向けての取り組みに積極的な企業だ。

株式会社アーバンリサーチ
http://www.urban-research.co.jp/
大阪に本社を構えるアパレル企業。URBAN RESEARCH (アーバンリサーチ) 、URBAN RESEARCH DOORS (アーバンリサーチドアーズ) 、SENSE OF PLACE (センスオブプレイス) 、KBF(ケービーエフ)など国内外で270店舗以上を展開する。「すごいをシェアする」を企業理念に、流行りに左右されず「すごい」と言ってもらえるような価値あるものの提案を行っている。2019年11月、廃棄衣料をアップサイクルする取り組み「commpost (コンポスト)」で第七回環境省グッドライフアワード実行委員会特別賞「環境と福祉」賞を受賞。

同社でのサステイナブルに対する意識は年々向上しており、2018年11月にはSDR (Sustainable Development Research) というプロジェクトチームが発足。

全社でSDGsを推進していく方針だ。今回はアーバンリサーチのSDGs方針について執行役員の萩原直樹 (ハギワラ ナオキ) 氏に話を伺った。

アパレル企業の社会的な課題

SDGsを取り組むようになったきっかけを教えてください

− 萩原氏コメント:SDGsの採択以前から、アパレル業界の廃棄衣料は大きな問題でしたが、アーバンリサーチではそれよりも前から、持続可能な社会に向けての活動を行う風土が会社に根付いていました。

そんな中で、2018年に衣料のアップサイクルについて社内の問題解決に動く中で諸外国のSDGs達成への活動を知るようになりました。

2011年から発起人として取り組んでいる東北コットンプロジェクトは、東日本大震災の被災地復興を目的とし、津波の被害で稲作ができなくなった農地に、海水でも育つ特性を持つ綿花 (コットン) を栽培しています。

東北コットンプロジェクトでの活動の様子

− 萩原氏コメント:このプロジェクトは単にコットンの栽培だけでなく、紡績、商品化、販売までを行うというビジネスに繋がっているので、まさにSDGsビジネスそのものです。

実際に会社全体の決断も早く、2018年11月にはSDR (エス・ディー・アール) というSDGs達成のためのプロジェクトチームを発足し、経営戦略の一環として強力にSDGsを推進しました。

基本方針の「3C」

− 萩原氏コメント:「3C」というアーバンリサーチ独自、アパレル企業ならではのSDGs基本方針を設けています。

Clothing Innovation (衣料資源の有効活用) 、Clean Earth (地球環境負荷の軽減) 、Community Building (コミュニティの形成)の大きく3つのテーマがあり、さらに細かい取り組み内容がそれぞれに設定されています。

アパレル業界の課題「衣料資源の有効活用」

まずは、Clothing Innovation (衣料資源の有効活用)の活動について教えて下さい

− 萩原氏コメント:このテーマでは、サステイナブル素材の活用や生産量の適正化を図っており、代表的な取り組みに2015年から参加しているGreen Down Projectがあります。

店頭で回収したダウンの羽毛を洗浄、精製加工し再利用することで資源を有効活用し、2020年現在、我々のダウン商品のほとんどにリサイクル羽毛 (=グリーンダウン) を活用できています。

2020年1月現在、9ブランド約270店舗でダウンを回収

− 萩原氏コメント:アップサイクルの推進も積極的に取り組む方針で、2018年11月から「commpost (コンポスト) 」というサステイナブルマテリアル・プロダクトブランドを立ち上げ、廃棄衣料 (自社倉庫にある販売不可能な不良品や汚損品) から新たな商品をつくり販売、回収しています。

不要となった製品に新しいアイデアやデザインを加え別の製品をつくるアップサイクルは、素材分別が難しい衣料の現場では困難なように思えますが、我々はそれを“協働によるモノづくり”で可能にしました。

commpost (コンポスト)の第一弾商品は多用途に使える収納バッグ

− 萩原氏コメント:協働パートナーとして、繊維を色で分けて付加価値のある素材にアップサイクルするカラーリングシステムを研究しているColour Recycle Network様、大阪箕面市で住民主体のまちづくりをされているNPO法人暮らしづくりネットワーク北芝様、それから我々の子会社であり、障がい者の雇用促進を目指す会社 株式会社URテラスとのモノづくりを進めています。

本プロジェクトは商品のアップサイクルだけでなく、売れれば売れるほど縫製など雇用創出にもなっていて、この取り組みが評価され第七回環境省グッドライフアワード実行委員会特別賞「環境と福祉」賞を受賞しました。携わる全ての方々にやりがいを持って取り組んでもらえています。

協働によって叶えられるコトと使命感

外部の方々との繋がりも生まれているんですね

− 萩原氏コメント:本活動のようにSDGs達成のためには自社だけでは負いきれない問題も多く、パートナーシップも精力的に組んでいく必要がありますね。

プロジェクトを通して課題解決や社会貢献に結びついていることを実感すると、全てのステークホルダーに価値を与えられる企業でありたいという使命感・やりがいがとても大きくなります。

一方で、いくら素晴らしい取り組みであっても売上や利益が上がらなくて終わってしまう事例も見てきました。

この活動を続けていくためにも、ストーリーだけではなく、商品やサービスそのものが魅力的になるよう努力し続けなければならないと考えています。

SDGsを受容する社風基盤

パートナーだけでなく社内での士気も上がりそうですね

− 萩原氏コメント:社内での意識向上は3Cの中うちのClean Earth (地球環境負荷の軽減)に該当し、有志のメンバーで構成されたSDRというチームが中心となって進めています。

SDRはサステイナブルやSDGsに関しての全社的な課題を毎週議論し推進している、15名ほどの部門横断のプロジェクトチームです。

加えて、もともと環境問題や持続的な社会に関する共感性が高い社風であるからこそ、チームメンバー以外の従業員からも意識の高さを感じています。

例えばGreen Down Projectやcommpostでは、これらの取り組みを店舗スタッフへしっかり説明して落とし込んでいるので、各々で該当商品が目立つようにディスプレイを変更したり、積極的にお客様へストーリーテリングを行う姿が見られたりするんです。

「すごいをシェアする」コミュニティ形成

最後のC、Community Building (コミュニティの形成)とはなんでしょう

− 萩原氏コメント:これは異業種や自治体・N P Oなど多様なビジネスパートナーシップを結んで、地域のまちづくりや従業員の働きがいをつくることを目標とした取り組みです。

長野県茅野市にオープンした宿泊滞在型施設「TINY GARDEN 蓼科」は、まさにこれを実践する場になっていて、地元の方や訪問される方との交流を通して新たなパートナーシップや人とのつながりによる価値創造が進んでいます。

宿泊滞在型施設「TINY GARDEN 蓼科」

− 萩原氏コメント:企業理念である「すごいをシェアする」にちなんで「シェアクラブ」という社内クラブも盛んです。現在20ほどのクラブがあり、趣味の輪を広げることに会社が支援をしています。

実際にそこから新しい商品のアイデアが生まれたり、社内コミュニティが社外と繋がったりと仕事へも発展しているんですよ。

SDGsビジネスとしての拡がり

各プロジェクトを取り組む上での課題はありますか

− 萩原氏コメント:SDGs推進と経済性の両方のバランスを保ちながら事業を遂行することは常に課題です。

SDGsは世界中が抱えている問題をビジネスで解決するという考え方のもとにあるので、経営視点を含めた推進力が重要だと思います。

時には社内で議論が生じますが、どちらかの意見を重視するのではなく、それぞれが納得いくまで議論し、理解を深めながら一緒の方向に進むことが大切だと考えます。

また、プロジェクトが大きくなれば大きくなるほど、ステークホルダーとして社外の関係企業・団体が増えていきます。

プロジェクトに関わる全てのメンバーにとってプラスになるように調整することは中々容易なことではありませんが、これを一緒に乗り越えて、結果としてより価値のある活動になれば素晴らしいと思います。

今後の目標や展望を教えてください

− 萩原氏コメント:SDGsは競合や業界、国を超えて取り組むことが可能な目標だと思うので、今後は課題解決のためにそうした境界を越えていきたいですね。

アパレル業界に限って言えば、廃棄衣料の問題はどこの企業も抱える大きな課題ですが、commpostには業界が一丸となって取り組むことができる将来性があると思っています。

他社との協働には技術的な面での課題もたくさんありますが、地球環境のために競合他社や海外企業と取り組んでいける可能性を見据えて、これからも研究開発を進めていく考えです。

今年はSDGsを経営課題として捉えるようになった企業も増えたでしょうね

− 萩原氏コメント:欧米諸国と比較すると日本はまだまだ遅れを取っていますが、今回の新型コロナウイルスの影響など外的変化により、企業だけでなく消費者にも意識の変化が表れているので、今後日本でもSDGs達成のための活動がより拡がるのではないでしょうか。

SDRではスタッフ一人ひとりが問題意識を持ち、自分たちのできることから取り組んでいくことが大切だと言っています。

個人個人の小さな意識と行動の変化が、いずれは企業と企業、国と国とへ拡がっていく未来を目指して、アーバンリサーチとしてできることをしっかり取り組んでいきたいですね。

インタビューにお答え頂き、ありがとうございました。

個人、企業、国としての協働意識

今回の取材内容を含め、それ以外の取り組みについて同社のホームページ内「SDGs活動報告書」から確認することができる。

欧米では、The Valuable 500 (ザ・バリュアブル・ファイブハンドレッド) などの活動を通して、萩原氏が話していた“競合企業同士の協働”が既に始まっている。

例えビジネスで競合していたとしても、環境問題を解決する上では皆パートナーとなりうるのだ。

アーバンリサーチも署名した The Valuable 500 (ザ・バリュアブル・ファイブハンドレッド)

取材の中で語られた萩原氏の言葉からは、当事者にしかわからないであろう“やりがい”が確かにあることを感じた。

業界特有の課題解決が環境問題・雇用問題の解決に結びつき、ビジネスとして回っていくことは、やりがいや喜びが労力を上回るモチベーションになっていくのだろう。

「何故それをするのか?」などという質問は、この時代ナンセンスだ。

これからの新しい生活下で暮らす全ての人、消費者までもがステークホルダーとして“協働”していく意識が必要なのかもしれない。