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老舗企業は今をどう捉えるか

自社製品にイノベーションを

日本には「老舗」という言葉が存在する。長きに渡り事業が繁盛していて、顧客からの信頼がある企業やブランドを指して使われる言葉だ。

その言葉を耳にすると、単純に年数を重ねただけではない貫禄と人々に愛されてきたであろう歴史を感じる。

業歴には明確な基準はない。例えば、東京商工リサーチでは創業30年以上を“老舗”と定義しており、他方、帝国データバンクでは創業100年以上を“長寿企業”と呼称している。

時代とともに流行があり、人々が好む文化や生活様式は日々変わる。また、国内外の情勢や自然災害、今回の新型コロナウイルスのような外的要因によっても景気は大きく左右される。

企業はその中で消費者のニーズをいち早くキャッチし、存続していかなければならない。

MMDでは今回、創業から50年以上続く3つの老舗企業の今に注目した。

長く続く企業の“今”に向き合う取り組みからは、それらの企業が三社三様に、いかにして時流を読み、受け継がれるモノの中に新しいコトを取り入れながら、事業存続しているかが見えてくるのではないだろうか。

耐熱ガラスが癒しを与えるアイテムに

「おうち時間を豊かにするアイテム」でも紹介したように、「おうち時間」の到来から癒しグッズの売れ行きはまだまだ好調だ。

1921年の創業以来、耐熱ガラスメーカーとして名のある「ハリオサイエンス株式会社」は、2018年から“癒し”に特化した自社ブランド「HARIO RELAXING (ハリオ リラクシング)」をリリースしている。

従来はビーカーやフラスコなどの理化学用品を扱っている同社だが、同ブランドで展開するのはネックレスやピアス・イヤリング等、ガラス製のアクセサリーなどが中心だ。

癒しに特化したブランドというだけあり、もちろんただのアクセサリーではない。

これらすべてのアイテムには好みのアロマオイルや香水などを入れて、身につけながら香りを楽しむことができるのだ。

同社の展開する耐熱ガラスは、精油 (アロマ) を直接入れることが可能なことから、独自の発想で開発されたオリジナルなアイテム展開が面白い。

ガラス空洞部に好みの香りを入れて楽しめる

また、見た目の美しさが特徴的なガラスペンも注目したいアイテムのひとつだ。

「第29回 日本文具大賞」デザイン部門でグランプリを獲得した同アイテムは、カートリッジ式ではなくペン先をインクに浸して使う、いわゆる「つけペン」という筆記具。

視覚的な癒しはもちろん、“綴る”というアナログな行為そのものが癒しを与えるという考え方は、コロナ禍である今こそ、消費者のインサイトに響くのではないか。

従来のプロダクトも新しいプロダクトも、自社の技術や製品の特徴を存分に活かして生まれた商品である。

これまでのイメージをガラリと変えるような老舗企業の商品開発は、今後もわたしたちに新しい驚きと発見を与えてくれるであろう期待が高まる。

マッチの技術を使った新しいカタチ

長く使われ続けるモノもあれば、時代の変化や技術の進化による新しいモノの到来で衰退してゆくモノもある。

果たしてその需要の低下を“寿命”と捉えて諦めることだけが残される道なのだろうか。マッチもその岐路に立つアイテムのひとつ。

1929年からマッチの製造を続ける「神戸マッチ株式会社」は、使い捨てライターの台頭やロゴや店名などの入った広告マッチの需要の低下を受ける中で、その製造技術やルーツを語り継ぐ術を模索してきたという。

そんな想いから2015年にリリースされたブランドが「hibi (ヒビ) 」。

「マッチのように擦って火をつけるお香」として、受け継がれる技術を持ち合わせ新たな利用シーンアイテムの開発に成功した。

世界最大級のインテリア見本市「アンビエンテ」や「メゾン・エ・オブジェ」への出展を果たし、今や世界中から注目されるアイテムとなっている。

日本独自のアイテムは海外の展示会でも人気

残しておきたい文化的アイテムやその製造技術を、現代でも身近に使用できるモノとして新たにイノベーションを起こしたことで、日本人のみならず海外客にもヒットするインバウンドアイテムと進化を遂げた事例といえるだろう。

マッチと同様に、現代の日本ではニーズが減ってしまっているが魅力の溢れる文化やアイテムは、まだまだ他にもたくさんあるのではないだろうか。

暮らしの裏方アイテムが表舞台へ

世の中のI T化で我々のライフスタイルには大きな変化が訪れた。SNSの普及により「見せる・見られる生活」が到来した。

家の中や食べたモノ・暮らしぶりを共有すること、物事の感想や自身についての思想を発信することにおいて人々の発信に対する抵抗は薄れ、それらが見えることが当然の世の中となった。

この時代の変化に目をつけたのが「平安伸銅工業株式会社」。同社は突っ張り棒をはじめ、収納用品やDIYパーツなど、住まいにあると便利なプロダクトを展開している。

用途に合わせパーツを自由にカスタマイズできる

創業70年、発案から40年間改良を重ねてきたという主力商品である突っ張り棒の新ブランドが「DRAW A LINE (ドローアライン) 」。

これまではどちらかというと見せない便利グッズとして扱われていた突っ張り棒のイメージを覆し、インテリアの一部としてデザインしているところが新鮮だ。

また、同社のSNSを見ると利用シーンの訴求にも力を入れているのがわかる。

カスタマイズできる特徴を活かして、実際に使用している人々を紹介し使い手のスタイルに合わせた商品提案を行なっている。

自由度の高いプロダクトであることから、ユーザーの声を反映した商品開発や他社とのコラボなど、今後の商品展開にも可能性が広がっている。

変わるコト変わらないモノ

いずれの企業も、扱う製品やアイデアは違えど、これまで受け継いできた技術やモノの本質を見極め応用している点では共通している。

ハリオサイエンスのガラスペンやhibiのマッチ型のお香は、IT化で物事が便利になるのと同時にアナログなコトやレトロなモノをあえて嗜むような風潮も後押ししているように感じられる。

今がまさに故きを温ねて新しきを知る機会なのかもしれない。

また平安伸銅工業の「見せたくなかったモノを見せるモノに変える」という発想は「見せる・見られる生活」である現代だからこそ活きるアイデアだろう。

今の業歴に関わらず、企業存続のために現状に満足することなく、時代によってモノの見方やアプローチを変えていく柔軟な姿勢は必要不可欠だ。

そうして変わるコトもあれば、変えてはいけないモノもあるのだと思う。それこそが、見極めるべき“モノの本質”ではないか。

本質を見極め、本質を変えずに変わっていく――これは企業の歴史の長さに関わらず、これから歴史をつくっていく企業にとっても同じく大切なことだ。

日本にはたくさんの“老舗”と呼ばれる企業が存在しており、それはきっとこれからも増えていく。

MMDでは、次の時代、今後老舗と呼ばれることになるであろう企業やブランドのこれからに期待すると同時に、そこに必要な情報を発信するブレーンとして、共に歩んでいきたい。

掲載ブランド紹介

HARIO RELAXING (ハリオ リラクシング)

「ハリオサイエンス株式会社」から展開される癒しのための新ブランド。日本で唯一工場を持つ、耐熱ガラスメーカー「HARIO (ハリオ)株式会社」の耐熱ガラスを使用し、癒しをテーマにアクセサリーやアロマディフューザーなどのアイテムを展開する。

公式ホームページはこちら
https://www.harioscience.com/hario-relaxing/index.html


hibi (ヒビ)

マッチのように擦って火をつけるタイプのお香スティックとして、「神戸マッチ株式会社」と「株式会社大発」とが共同で開発したオリジナルブランド。デザインプロデュースを「TRUNK DESIGN (トランクデザイン) 」が手掛ける。

公式ホームページはこちら
https://hibi-jp.com/


DRAW A LINE (ドローアライン)

突っ張り棒のトップメーカーである「平安伸銅工業株式会社」とクリエイティブユニット「TENT (テント) 」とのコラボレーションブランド。「一本の線からはじまる新しい暮らし」をコンセプトに突っ張り棒で叶う新しいライフスタイルを提案する。

公式ホームページはこちら
https://www.heianshindo.co.jp/draw-a-line/